土地の相続税対策といっても人によって対策方法は様々です。自分の場合にはどんな方法がぴったりなのか?
もしかしてあまりよくない方法を選んでしまっていないか?などの不安も出てくるはずです。
今回の記事では、ではいわゆる「得する人のテクニック」を、実際に損をしてしまった人の失敗例なども踏まえながらご説明していきたいと思います。
目次
1.所有している土地の相続税対策
親が所有している土地は、そのまま相続することになれば多額の相続税を支払うことになってしまうかもしれません。どのような節税の対策ができるか、可能な限り早いうちに考えておきましょう。
(1)土地の相続評価額を下げる
相続税は土地の価値に比例して高額になります。つまり、相続税を下げるには、土地の相続評価を下げる必要があるのです。どうなれば土地の評価が下がるのかをある程度把握しておきましょう。
相続評価の考え方
- 土地は更地の状態が最も高く評価される
- 土地に建物を建てると、更地の場合よりも土地の評価を下げることができる
- 「小規模宅地等の特例」にあてはまれば大きな減額がある
※相続された土地が事業に利用されていた場合などについては、最大で80%の減額あり。
参考:法務省ホームページ http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4124.htm
以下、賃貸アパートやマンションを建て、人に貸している評価額について
- 貸家建付地の評価減に該当する
- 入居率が高ければ高い程、土地の評価額を大幅に下げることができる
(2)価値の低い不動産を高い不動産に組み替える
価値の低い不動産を処分し、価値の高い不動産に替えることを「資産の組み替え」と言います。「価値の高い不動産に組み替えてしまうと相続税は上がってしまうのでは?」と思われるかもしれません。
ですが、例えば、価値の低い不動産を分散して持っているよりは、それらを処分して価値の高いひとつの不動産を手に入れたほうが、結果として収益や管理、税金をまとめられ、相続税も抑えられる可能性が高くなります。
資産の組み替えには次のようなものがあります。
- 現金で、投資用のマンションを購入する。
- 広いが路線価が低く資産価値の低い物件を売り、狭いが路線価が高く資産価値の高い物件を購入する。
- 借り手がつきにくい、空室が多いといったアパートなど収益性の低い物件を手放し、収益性の高い物件を購入する。
- 活用できていない広い土地を売り、活用しやすい土地を購入する。
- 広い物件を売り、「小規模宅地等の特例」などが適用される広さの物件にする
こういった「収益性の高い不動産」への組み替えは、売却の際にも非常に有利になり、おすすめです。
(3)「売却」も立派な相続税対策
親からもらった財産だからといっても、有効に活用されていない土地を持ち続けることは、決して有意義なことではありません。土地を持っているだけでも、面倒な草刈りや掃除などのメンテナンスは必要になりますし、相続税もかかってしまいます。
亡くなった人から受け継いだものを大切にする気持ちは理解できますが、そのために遺族たちが苦労をするようでは新たなトラブルの原因にもなり、親族全体にとってもよいこととは言えません。「先祖代々の土地」に対する執着を捨てることが、土地の相続税対策の第一歩になるのかも…と考えてみましょう。
※参考文献「損しない相続」倉橋隆行/朝日新書
土地を手放す=売却することのメリット・デメリット
土地を手放すためには、売却する必要があります。売却のメリット・デメリットを見てみましょう。
【メリット】
- 財産を現金化できるため、遺産分割がしやすくなる
- 納税資金が準備できる
- 他の不動産や金融資産を購入するなど、資産の組み替えが可能になる
- さまざまな税の負担が軽減できる
- 維持や管理、それらにかかる費用が不要になる
【デメリット】
- 現金にすることにより、相続税評価額が高額になる=納税額が高くなる
- 売却時に譲渡所得税がかかる
- 譲渡費用が発生する
- その土地から得ていた収益があれば、今後得られると見込んでいた収益が失われる
(4)不動産管理会社を作って相続税を減らす
貸不動産を所有して家賃収入がある人の場合、賃貸事業を「法人化」することで、所得税及び相続税を節税することができます。メリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
- より多くの出費を「経費」として計上でき、所得を減らすことができる=所得税を減らすことができる
- 法人が所有している不動産には相続税がかからない
- 財産の評価額を減らすことができる(税金が安くなる)
- 被相続人の生存中には、家族に対し「役員報酬」や「給与」の形で資産を分配できる
【デメリット】
- 法人税など、法人化することによる新たな費用が発生する
- 法人化や維持のための事務作業が発生する
- 法人の税申告は複雑であるため、税理士への顧問料などが発生する可能性が高い
2.土地の相続税対策の落とし穴
土地の相続税対策にはさまざまな方法があります。「自分でもできるかもしれない」と実践するのはいいのですが、誤った知識で節税方法を実践すると、かえって大損することも…。大きなお金が動くことだけに、中途半端に行う相続税対策はとても危険なものなのです。
この章では、「他人の失敗」から相続税対策の危険性を学ぶことにしましょう。なお、本章については大村大次郎氏の著書「やってはいけない相続税対策」(小学館新書)を参考・引用させていただき、紹介致します。
以下のようなケースは具体的にどうすればいいのかということについては、ぜひ実際に本を実際に読み、確認してみてください。
(1)ケース1:タワーマンション節税をするはずがかえって大損する羽目に…
相続税節税対策としてタワーマンションの高層階を3億円で購入したK氏。「マンションは高層階であっても低層階であっても相続税の評価基準は同じ」であり、低層階の価額で相続税の申告ができることを利用してのことでしたが、その後、売却のタイミングを誤ったために損をしてしまいます。売却のタイミングの重要性を考えさせられるケースです。
(2)ケース2:相続税の知識がなかったために失敗したアパート経営
「相続税は最高で55%」ということを耳にし、相続税節税対策のためにアパート経営を始めたO氏。しかし、アパート経営はそれほど簡単なものではありません。苦労していたところ、友人の税理士に驚愕の事実を伝えらえます。誰に相続すればいくらまで相続税がかからないのか。基礎控除などを含む基本を知っていれば苦労も損も避けられたのに…というケースです。
3.参考書籍・参考URL
前章で参考にさせていただいた著書のご案内です。その他、相続税について参考になる文献をご紹介致します。
「やってはいけない相続税対策」大村大次郎/小学館新書
https://www.amazon.co.jp/dp/B00QV5QFPW
その他参考文献
「損しない相続 遺言・相続税の正しい知識」倉橋隆行/朝日新書
https://www.amazon.co.jp/dp/B009AAKVVO
「プロの財産コンサルタントが教える やってはいけない不動産相続対策」
高田 吉孝/実業之日本社
https://www.amazon.co.jp/dp/4408111996
※入荷未定
「税務調査官の着眼力II 間違いだらけの相続税対策」秋山清成/中央経済社
https://www.amazon.co.jp/dp/4502182613
※2016年10月現在レビューランキング1位
当サイト内参考記事
【賢い土地の相続】損をしないために知っておきたい5つのこと
土地の相続税のイロハをやさしく解説!相続税って私も払うの?
4.おわりに
さまざまな土地の相続税対策や失敗例などをお伝えしてきましたが、いかがだったでしょうか。記事からもお分かりの通り、相続税対策はとても複雑なものです。ご自身の理解も深めつつ、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。
相続というと「縁起でもない」というお話になるかもしれませんが、その先に隠れている損やトラブルこそ、誰もが望まないものです。少しずつでも話し合いが進められるよう、ご親族と会う時などに話題に出してみてください。また、土地を持つ親の同意を得て、土地の売却・取得などの資産の組み替えも視野に入れて行きましょう。