家を手放さずローンが払えなくなる問題をなんとか解決できないだろうか?とお考えではないですか?貯蓄を徐々に食いつぶしている状況で、生活費や子どもの教育費などが気にかかり、早く何かしらの対応をしなければと金銭的な不安も、徐々に大きくなってきているのではないでしょうか?
この記事ではまず、すぐに行動に移せる「住宅ローンを払い続けるための方法」をご紹介します。万が一、家を売却した方がいいと想定される場合にも、売却を有利にすすめるための方法についてもなるべく早く行動に移せるよう解説しました。
これからの将来について、ご家族でお話される際に参考としていただける内容になっていると思います。ぜひご一読くださいませ。
1.家を手放さなくてはいけなくなる前に試してみるべきこと
まずは「家のローンが払えるようになる方法」を探してみましょう。手元の現金を増やすにはどうすればいいのでしょうか。なお、消費者金融やクレジットカードローンは極力使わない方法で考えていきたいと思います。これ以上借金を増やしてしまっては意味がありません。
(1)家計を見直す、資産を現金に替える
家計の見直しは基本中の基本です。家計のやりくりですので、「大した金額にならないのでは」と思うかもしれません。ですが、今後のお金の使い方を考える上でも非常に大切なことになりますので、ぜひ試してみてください。いまからでもすぐにできることばかりです。
- 保証が重複しているなどして見直すべき保険はないか(すぐに解約することはおすすめできません。減額などを申し込みます)
- 学資保険などの貯蓄系保険の金額を小さくする、解約する
- 株、自動車の現金化(ただし、自働車についてはご家庭や地域によって非常に重要なものですので、ただちに現金化することがおすすめできない場合もあります)
(2)一定期間のみ返済額の減額を申し出る
もし転職後何かしらの好転があったり、妻の就職活動が成功したりするなどして収入が増える見込みがあるのであれば、一定期間のみローンの返済額を軽減してもらうよう金融機関に申し出るという方法があります。
ただし、減額はあくまでも一定期間のことです。期間終了後は、軽減していた期間の「軽減された分」とその利子も月々の支払額に追加されるため、軽減される前よりも大きな支払額になります。
申し出の時点ではっきりと収入増の目処が立っていない場合には、(3)の返済期間延長のほうが無難でしょう。
(3)返済期間の延長を金融機関に申し出る
「近い将来、住宅ローンの支払いが難しくなるかもしれない」という段階になったら、金融機関にローンの返済期間延長を申し込んでみましょう。返済期間が長くなることで、1ヶ月あたりの返済額は少なくなります。
住宅ローンはできるだけ早く返済したほうが利子も小さく、返済期間を延ばすのは本来避けたいこと。ですが、今はまず「家のローンが払えないという状態」から抜け出すことが優先です。支払えるだけの金額に調整し、ローン総額が増えてしまうことについてはもっと先に考えることにしましょう。
いずれ生活が落ち着き、以前と変わらない金額で住宅ローン返済ができるようになれば、返済期間を短くすることも可能です。
(4)妻の力を借りて収入を増やす
「家族が働いて収入を増やす」というのはもっとも有効な方法です。もし現在妻が働いていないのなら、就職活動をして収入を増やしましょう。「既に妻も働いているが、扶養控除適用の範囲である103万円に抑えている」という場合は、扶養控除を諦めてでも現金収入を増やすべきではないでしょうか。可能であれば(1)~(3)と並行して進めてみましょう。
(5)JTIを通じ、自宅を貸し出す
自宅を貸し出すことで利益を得て、家のローンを返済することも可能です。一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)による「マイホーム借上げ制度」を利用することで、自宅を手放すことなくローン返済の資金を得ることができます。ただし、これは原則としてシニア(50歳以上)を対象としていますのでお気を付けください。50歳未満の場合には、下記特例にあてはまるものがないか確認しましょう。
【考慮する点のまとめ】
- 50歳以上の契約者が対象である
- 3年ごとの定期契約
(自宅を貸し出して3年間は、元の自宅に住めない) - 貸し出している間、別の住まいを確保する必要がある
(実家、親族の家、より安く借りられる賃貸物件など)
【「マイホーム借上げ制度」50歳未満でも利用できる特例】
- 再起支援特例…急に収入が減るなどして住宅ローンの返済が難しくなった場合
- 定期借地特例…住宅が、定期借地に建てられている場合
※定期借地:決められた期間を更新して借りることのできない土地 - 海外転勤者向け特例…海外へと転勤する人である場合
- 相続空き家特例…家を相続したものの、空き家となってしまう場合
- 生前相続特例…親子が同居しており、名義は子供にある場合
(参考:一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI ) 「マイホーム借上げ制度」年齢要件(50歳以上)の特例)
2.家のローンの支払い滞納が続いてしまった場合
住宅ローンが払えなくなり、滞納が続いてしまった場合にはどうなるのでしょうか。即座に家を手放さなくてはならないわけではなく、次のような段階があります。
(1)書面で支払の催促が来る
滞納して1~2ヶ月は、ローン返済を催促するための通知が届きます。名前は金融機関によって異なりますが、意義は同じです。この通知が来た場合には、指示に従って速やかに支払う必要があります。
◆書面の名前の例
- 催促状
- 支払い通知書
- 督促状
- 催告書 など
◆対応の方法(対応は金融機関により異なります)
- すぐに振り込む
- 翌月分と同時に引き落としできるよう口座に入れておく など
(2)住宅ローンを一括で支払うよう請求される
催促を無視し続けて住宅ローンを払わないでいると、一括でローンを返済するよう請求されます。これは「期限の利益の喪失」といい、月々の返済を契約通り行わなかったため、分割で支払う権利を失ってしまったことを意味します。
(3)保証会社がローン延滞者の代わって金融機関にローンを返済する(代位弁済)
代位弁済(だいいべんさい)とは、ローンを支払う際に契約した保証会社が、債務者に代わってお金を支払うことをいいます。とはいえ、もちろん借金が消えるわけではありません。債務者にとってはローンに関する今後のやりとりの相手が、金融会社から保証会社に代わったというだけのことです。
(4)保証会社がローンの回収のために家を競売にかける
保証会社は貸したお金を取り戻すための対応を始めます。しかし、債務者にはそれだけの支払い能力がないため、家を売って現金を取り戻すしかありません。そこで保証会社は家を「競売」にかけ、売り手を探します。借金を返せない債務者にこれを止める権利はありません。詳細については後ほど詳しく説明します。
競売が始まってしまうと、債務者にとって都合のよい解決方法はなかなか見つかりません。弁護士や相談事務所に相談することもできますが、できるだけ競売が始まる前、さらにその期間においても早い段階で相談するのがおすすめです。
なお、競売の相談は次のような事務所で可能です。
※競売を避けるためには「任意売却」という方法が選ばれやすいため、ご紹介するどの事務所にも任意売却という名前がついていますが、競売に関する相談が可能です。
【相談先の例】
「競売」と「任意売却」の詳細については後ほど詳しくご説明します(3.家を手放すことも考えてみる (1)「競売」と「任意売却」の違い)。
3.家を手放すことも考えてみる
希望するわけではないのに家を手放さなければならないのは、家族の誰にとってもとても悲しいことです。ですが、タイミングや金額さえ違えば、再び家を手に入れることは可能なはずです。同じ家でしか家族が幸せに過ごせないのかといえば、決してそんなことはありません。一度は手放し、生活を安定させることを優先する…そんなふうに考えてみるのはどうでしょうか。
(1)「競売」と「任意売却」ってどう違う?
既にご説明した通り、住宅ローンの支払いが滞れば、家は競売にかけられることになります。競売は一般的に「できれば避けたい」とされることなのですが、なぜなのでしょうか。また、競売ではない方法で手放すことで、より有利に家を売却できるかもしれません。ここでは「競売」と、もうひとつの方法である「任意売却」を比較してみます。
ア.競売
「競売」は、ローンの保証会社によって家が売られてしまうということです。強制的な処分となりますので、さまざまな場面で債務者の希望が通りにくくなってしまいます。また、相場の50~70%ほどの売値になってしまうため、家を売った後も大きな借金が残ります。「家から追い出される」といった悪いイメージは、このようなデメリットの多さから生まれています。
イ.任意売却
「任意売却」は不動産業者などの仲介役に入ってもらいつつ、競売にかけずに住宅を売る方法です。一般の売却と違うのは、債権者(ローンを組んでいる金融機関)、債務者、仲介業者(不動産業者など)、この三者で売却のための調整を進めていく点です。
とはいえ、「三者での調整」ですので、強制的な処分である競売に比べればさまざまな希望も通り安くなります。そのため、競売のように悪いイメージも少ないのが特徴です。次の章でさらに詳しくご説明します。
4.任意売却を詳しく知る
結論から言えば、家を手放すのなら、競売よりも任意売却のほうがお勧めです。その理由をご説明します。
(1)売却よりも任意売却のほうがよい理由
競売より任意売却のほうがお勧めである理由は、イメージだけではありません。主に次の3つの点が大きいと考えられます。
ア.競売よりも高く売れる可能性が高い
ローン残債を減らすためにも、家はできるだけ高く売る必要があります。売値で補てんできない借金は、引き続き支払い続けなければならないからです。
先にご説明した通り、競売では市場価格よりずっと低い、50~70%程度の価格になってしまうことがあります。これにはさまざまな業界的な問題があるのですが、「トラブルをかかえた物件」として扱われてしまうことが主な原因だとお考えください。
競売の場合、物件や売り主に何かしらの問題があっても、買い手を守る法律は整備されていません。しかも、競売の物件は、物件に関する細かな説明や内覧がないまま商品にされるもの。買い手は「保証のないものを自己責任で買う」ことになるため、どうしても低い値段でなければ売れなくなってしまいます。
一方で、任意売却では市場価格の80~90%程度で売却できることが多くなっています。任意売却は債務者と債権者の間に仲介役が入り調整が行われるため、債権者の「このくらいの価格で売りたい」という希望がある程度通る可能性が高いからです。
【競売との違い】
=上記の結果、ある程度買い主を守ることにもなり、価格は競売より高くなる |
※瑕疵担保責任…買い主が物件の購入後、何かしらの瑕疵、欠陥を発見した場合、その責任を売主に求めることができるということを表す。(民法 570 条、566
条)
イ.売却や引っ越しの経費は売却により得たお金から捻出できる可能性も
家を売却すると、仲介手数料やさまざまな登記のためにお金がかかります。これらの費用は当然家の売主が支払うことになるのですが、任意売却の場合はこのような経費も売却によって得たお金から捻出することが可能な場合があります。
そうなれば「経費のためにお金をかき集めてくる」といったことも不要です。ただし、これはあくまでも債権者の善意によるもの。債務者との交渉は必要になりますので、失敗すればやはり経費を支払う必要はあります。
ウ.心理的な問題、時間の猶予の問題
- 近所に売却の事情を知られない
競売では、買い手を探すために不動産情報がインターネットなどに掲載されてしまいます。そのため、近所の人々に個人的な事情を知られてしまう可能性が大きくなります。一方、任意売却の場合、不動産会社の協力を得てマイナスな事情を内密にしてもらうことが可能です。不動産は広告などに出ますので「買い手を探している」ということはどうしても伝わってしまいますが、ローンの滞納などについては公になることもないでしょう。「ローンの滞納について知られなくない」ということは、仲介役である不動産会社にもきちんと相談するようにしてください。 - 自分のタイミングを選べる可能性が高い
競売では立ち退きの日が指定され、売り手の都合は配慮してもらえません。これを無視して引っ越しを行わないと、法的に裁かれることになってしまいます。任意売却ではある程度引っ越しの日程を交渉することができます。
(2)任意売却による問題点(デメリット)
競売に比べれば債務者(売主)に有利な点が多い任意売却ですが、問題点(デメリット)もあります。
ア.手続き、交渉などに非常に手間がかかる
任意売却にはさまざまな手続きや交渉が必要になります。そのため、細かなことを調べながら、根気強く進めていく必要があります。特に、「交渉」は人を相手にすることであり、普段から経験のない人には難しいかもしれません。
できれば任意売却を依頼できる事務所を見つけ、手続きや交渉を任せたいものです。既に競売の相談先でご紹介したような、任意売却の相談できる事務所に連絡を取ってみましょう。費用(この場合、「仲介手数料」)は「任意売却することにより得られたお金から差し引かれる」という形になっています。金額は宅地建物取引法により次のように定められています。
【任意売却の仲介手数料】 成約価格の3%+6万円+消費税※これより高い仲介手数料を提示してくる業者には注意が必要です。 |
(3)任意売却ができる条件
任意売却ができる条件は、債務者がローンを払えなくなっていることです。ローンの支払いが滞って初めて、任意売却という方法が取られます。ローンの支払いが滞っていなければ金融機関は家の売却になんら口出しはできず、そうなれば普通の売却と変わりません。
(4)任意売却が可能な期間
競売が始まる前までに、任意売却が完了しなければなりません(競売開始の通知が来た日ではなく、競売の開札期日の前日まで)。ローン滞納してから競売が決定されるまでの期間や、競売開始決定のあと入札が開始するまでの期間などは、状況により異なります。「競売になってしまうかもしれない」という段階で判断する、あるいは相談できる事務所に相談するなど、早めの行動が大切です。
◆住宅ローンの滞納から競売が始まるまでのスケジュール参考サイト
任意売却119番
◆競売開始決定以降のスケジュール参考サイト
教えて任意売却
5.家族との話し合い
節約する、自働車などの資産を処分する、妻に働いてもらう、家を売る。どれも、家族に少なからず影響を与えることになります。払えなくなる家のローンについて今後どうすべきか、家族それぞれにできることはないか、よく話し合うことが重要です。
家族への相談や、弁護士、相談事務所などのプロに相談するのは、可能なかぎり早いタイミングで。ローン延滞問題をひとりでかかえこんでしまい、その結果動きが遅くなることで、よりよい解決方法を逃してしまう例もあります。困らせたくないという気持ちはあると思いますが、黙っていればよけい迷惑をかけてしまうのだということを十分ご理解ください。
おわりに
収入が減ってしまい家のローンを払えなくなったらどうすべきか、ということについてご説明しました。家計の見直しや節約、売ることになった場合の任意売却、どちらについても、少しでも早く決断して動くことがよりよい結果の肝となります。専門的な知識も必要となってきますので、弁護士や相談事務所などのプロにも力を借りながら、家族の将来を考えていきましょう。